自閉症とは

自閉症は、その文字が示すような、殻に閉じこもって周囲の人に打ち解けないというような障害や状態ではありません。また乳幼児期に不適切な教育をされたために、親やそのほかの人たちに不信感を抱いて、心を閉ざしてしまったというような情緒障害でもありません。現在のところ原因不明の、そしておそらく単一の原因ではない中枢神経系を含む生物学的レベルの障害で、生涯にわたって種々の内容や程度の発達障害を示します。「広汎性発達障害」の一つとされますが、「広汎性」という名称からもわかるように、知的障害に比べて障害の範囲が広く、対人関係、コミュニケーション、想像力の問題など各方面での障害が見られます。自閉症は約70%が知的障害を合併していると言われていますが、残りの約30%には知的障害が見られず、知的障害のないこれらの人は高機能自閉症やアスペルガー障害と呼ばれています。
 

自閉症の行動特徴

自閉症と診断するには、次の3つの行動特徴が重視されます。
1) 人への反応が乏しく、人と視線を合わせなかったり、表情や身振りが乏しかったりします。情緒的な交流ができにくく、人との共感が欠けたり、相手の気持ちにそぐわない振る舞いをしたりします。
2) 言葉が無かったり、言葉の発達が遅れたりします。言葉が出てきても、オウム返しがあったり、会話が続かなかったり、一方的に際限なく話しかけたりして、遣い方が奇妙だったりします。また、ごっこ遊びなどの発達も遅れます。
3) 活動や興味の範囲が極端にせまく、手をひらひらさせるような常同行動に没頭したり、同じような活動を飽きることなく繰り返します。また、自分の行動のパターンにこだわったり、周りの人や様子のわずかな変化にも恐れや苦痛を感じてしまいがちです。
 

自閉症は治りますか?

自閉症は脳の機能に障害があると仮定されており、薬で状況の改善はあっても完治するものではありません。しかし、療育や教育を受けることで、いろいろなことを経験でき、状況によっては薬などを利用し、家族の努力、周囲の協力が適切に得られれば、その能力の不足や社会的不利が大いに改善される可能性があります。そのためには、現行の社会保障・福祉の制度のような社会的システムや、身近に理解者を得て安定した人間関係を持つことが大切なことです。
 

自閉症児のケア

自閉症の子どもは、ゆっくりとではありますが、着実に一歩一歩成長していきます。対応に際しては、障害自体は変わらなくとも、状態はより適応的に改善することを目指して働きかけます。まずは、直接的な状態変化を期す行動支援(療育)と環境調節に主眼が置かれることが多いようです。たとえば、コミュニケーションに「歪み」があれば、他者と注意を共有する行動を具体的な場面で練習させたり、コミュニケーションが必要な場に彼らが見通しを得やすい絵カードを導入したりします。今日においては、障害をもつ子どもたちに対して、「一人の人間」としての尊厳を全うし、余暇活動などを通して暮らしを充実させることが重要視されてきています。
 

親に対する心理的な支援

心理的な支援(カウンセリングなど)は、育児支援の一端としてまずは親など関係者に対して求められることが多いようです。わが子が自閉症をもつと告げられるとき、親には大変なショックと深い喪失体験がもたらされ、時には故ない罪悪感(障害を持った子どもを世に送ったなど)も生じます。また、現実の関わり上にも多くの困難があり、疲労や不安を伴いやすいのです。そうした親の苦悩や負担を理解して、知識や養育スキルを伝達するだけでなく、家族全体の育児参加を促し、自助グループなど相談の場を開拓することなども配慮し、親が子どもと関わるゆとりをはぐくめるならば、子どもの状態改善にも大きく寄与することでしょう。
 

参考文献
岡堂哲雄 監修 2005 現代エスプリ別冊 臨床心理学入門辞典 至文堂
石井哲夫他 監修 1995 自閉症の手引き 社団法人日本自閉症協会