ドメスティック・バイオレンス(DV)とは

ドメスティック・バイオレンス(以下DV)は、直訳すると「家庭内暴力」となりますが、日本で言う家庭内暴力は、思春期の子どもによる家庭での暴力や親による子供の虐待までもが含まれます。そこで、通常は「配偶者や元配偶者あるいは恋人など親密な関係にあった者による身体に対する暴力や心身に重大な影響を及ぼす言動」をDVとしています。多くの場合、DVの加害者は男性であり、その被害に遭うのが女性です。加害者は一般的に世間の評判は悪くないのですが、家庭では配偶者や恋人に暴力を振るい支配的な立場をとろうとします。この男女間で生じる暴力には、殴る・蹴るなどの身体的なものの他、言葉による暴力、心理的暴力、経済的暴力、性的暴力、子どもを利用した暴力などがあります。
また、多くの加害者に見られることですが、とても暴力的であったかと思えば、一転して反省したり非常にやさしくなったりするということを繰り返します。このように一般にDVには暴力のサイクルがあり、3つの相を繰り返すといわれています(Walker,Lenore、1979)。

1) 緊張期:日常生活のストレスの中で加害者の苛立ちが募り、被害者が加害者を怒らせないようにと緊張した生活が続きます。
2) 爆発期:苛立ちや怒りが抑えられなくなり、些細なことから突如、抑制のきかない暴力に発展します。
3) ハネムーン期:怒りを爆発させた後、ふと自分がひどいことをしてしまったことに気づき、「もう二度としない」などと謝罪したり、愛を語り、贈り物をしたり、やさしくなります。

 

DV関係から脱却できない被害者

上記のようなひどい暴力を受けても、被害者はその関係から抜け出せないことが多いといわれています。その理由として、加害者の暴力をばらしたり別れようとしたら「殺す」など脅かされているため、「別れたら殺される」という恐怖を感じ、また別れた後の報復に対して強い恐怖を感じていることがあげられます。また、子どもがいる場合は、子どもには父親が必要ではないかと考えたり、子どもの将来を考え離婚に踏み切れない人もいます。さらに、心理的暴力を受け続け自尊心が低下したり、問題に対処できない無力感があったり、あるいは金銭的に苦しかったりするため、自立した生活を営むことに不安を抱いている場合もあります。
 

DVによる影響

DVの影響によって被害者に、様々な反応が見られます。
 

感情的な反応

する人に暴力を振るわれるというのは、それ自体大変大きなショックとなります。また、次はいつ殴られるのかという不安、暴力を受けた怒り、抵抗したり助けを求めたりできない無力感、「暴力は自分の愛情不足が原因かもしれない」という自責の念などがあります。さらに、暴力が子どもに行かないようにと常に周囲に対して警戒したり、何に対しても過剰に反応してしまいます。
 

精神的な反応

家庭では暴力を振るう相手に対し、常に緊張がつきまとうため、睡眠障害や悪夢に悩まされます。また、集中力、思考力、記憶力などの知的能力が減退し、仕事に支障をきたしたり、人間関係で問題が生じたりしやすくなります。また、被害者だけでなく、被害者とともにいる子どもにも様々な影響が出てきます。たとえば、不安感、睡眠障害、摂食障害などのストレス症状、無力感や罪悪感、他者とのコミュニケーションがうまく取れない、感情をうまく表現できない、身体の発育の遅れなどです。さらに、DVの家庭環境で育った子どもは加害者になる可能性が高いといわれています。他者に対して暴力を振るわなくても自傷行為を繰り返したり、薬物、アルコールに依存したりすることもあります。
 

DVのカウンセリング

まずは、DV被害者の置かれた状況が、DVの進行中である場合や、DVからの救済直後である場合などがあるため、あるいはDVを受けることによって金銭的、身体的、社会的に危うい立場におかれるため、まずはDV被害者の安全確保と安心感がもてることに最大の気を配ります。したがって、DV被害者はカウンセリングだけでなく法律、社会福祉、医療などの様々な領域から援助を受ける必要があります。そうすることで、安全な場所や安心な立場で休息することができ、それ自体が心理的な援助となりえます。
その上でカウンセリングの中でできることは、事態の把握ができないまま、「どうして自分がこんなつらい目にあうのか」「自分に悪いところがあったから暴力を受けているのではないか」などの自責感に苦しんでいる被害者を、まずは自分が受けている暴力は正に「DV」であり、「自分は被害者である」という気付き・認識を促すことです。また、被害者の持つ無力感、抑うつ感などの精神的症状は、DVやほかの被虐待者にも共通して生じる「正常な反応」であり、正常であるからには回復できることを説明します。こうすることで、「認知の転換」を促し、被害者の中に自分自身が変われることへの希望と意欲を芽生えてくるといわれています。こうしたカウンセリングは被害者のペースにあわせ、ゆっくりと進められることが望まれます。
 
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参考文献
岡堂哲雄 監修 2005 現代エスプリ別冊 臨床心理学入門辞典 至文堂
尾崎礼子 著 2005 DV被害者支援ハンドブック 朱鷺書房
Walker,Lenore 1979 The battered woman New York:Harper & Row