認知症とは

物忘れが目立つようになったりするほか、時間や場所が分からなくなってしまったり、抽象的に物事を考えること(言葉や数を使いこなすことなど)が難しくなったりします。認知症とは、こうした症状をまとめて言い表した言葉であって、背景には様々な病気があります。そのため、「認知症になってしまうともうおしまいだ」という悲観的な誤解もありますが、どのような病気に由来するものなのかをまず把握することが重要です。最近では認知症のなかには治るものがあることが分かっており、そのためにも早期発見に努めることが必要になります。小説や映画などの影響から、若年性アルツハイマーなどにも関心が高まっていますし、それらの媒体を通して知ることが、分かりやすくて参考になるかもしれません。

認知症の割合

認知症にかかる割合は少なくなく、65歳以上では人口の6~7%が認知症を抱えており、これを計算すると約200万人ほどの方がいらっしゃることになります。加齢によって増加する傾向にあるので、八十歳代では4~5人に一人が認知症であると云われています。一方、遺伝的な影響を気にされる方が多いですが、家族が認知症になったからといって自分もなる、という心配はそれほど要らないようです。

認知症と通常の物忘れとの違い

加齢に伴う物忘れは、思い出しづらいということはあっても、時間をかければ思い出すことの出来るものです。 しかしながら、認知症によるものでは、物忘れをしていることを自体も忘れてしまうため、人から物忘れを指摘されたりすると怒ったり、逆に不安が高まったりします。そうした状態が続けば、次第に他人が信じられなくなったり、自分に対する自信が持てなくなり、ますます人嫌いしたりふさぎ込んだりするようになるでしょう。また、「怒りっぽかった人がなんだか最近丸くなった」などの変化が、加齢による自然なものと思われたりしますが、こうした変化も認知症の初期段階だという可能性もあります。そのため、 もし病院を受診される場合は、ちょっとしたことでも変化があれば、それを伝えることが必要でしょう。

認知症の治療に際して

現在、認知症はほぼ、アルツハイマー病によるものと脳血管性のものが占めています。それらに対しては、薬による治療や心理的リハビリテーションが行われているのが現状です。お薬の場合、アルツハイマー病の進行を遅らせるものや、脳血流改善薬、脳梗塞の予防薬などがあります。心理的リハビリテーションでは、現在持っている能力を活用したり、環境調整することで心理的な安定を作っていきます。医療的なケアも、リハビリ的な関わりも、ご本人への対応としてはどちらも重要です。

認知症のケアを考えた時に

認知症は、誰よりもまずご本人が気にされるものです。アルツハイマー病などで、忘れたことさえ忘れたとしても、気持ちの上ではそこに違和感を感じますし、それが続けば不安感も増していきます。また、認知症の一つであるうつ病の場合などでも、何かしらきっかけや理由のようなものがあれば、悩みを抱えているということになります。そうしたとき、自分の状態について知ることや、それを受け止めていくことを一人でやろうとすると難しいことが多いようです。ご家族だけでなく、専門の機関に上手く使うことは、何らかの助けになるでしょう。
ご本人が悩まれる一方で、家族の苦悩もあります。ご家族に対してはまず、認知症についての正しい知識を身に付けていただくことが必要になります。なぜなら、正しい知識を身に付けることは、適切な対処法を知ることにも繋がるからです。また、ご本人が出来ること出来ないことを知り、どのような思いを持って生きているのかについて一般的な知識を得ると、認知症のご本人の気持ちを少し思いやれる余裕が生まれてくることもあります。もちろん、余裕が必ずしも生まれるとは限りません。元気だったときに迷惑をかけられただとか、自分の家族にも大事にされなかったので同じ気持ちを義理の親にも感じるだとか。そうした理由があって抵抗を持つ場合もあります。このような場合、認知症に関する知識だけでなく、苦しんでいるという気持ちを誰かと共有することも、時に必要になります。
これら認知症にまつわる問題は当たり前のようにありますし、そのことで当人もご家族も苦しんでおられます。そのため、年々、認知症の本人および家族に対する個別カウンセリングの必要性が高まっています。まだ一般的でない取り組みかもしれませんが、そうした社会的な重要性も考えて、認知症の方やご家族に対するカウンセリングも行っています。

参考文献
小澤勲 2005 認知症とは何か 岩波新書
小沢勲・黒川由紀子(編著) 2006 認知症と診断されたあなたへ 医学書院

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